労働審判に向かない事件(労働審判に不適当な事件)
2016.04.06更新
以前、「労働審判(労働審判制度)とは」と題して、労働審判(労働審判制度)についてご説明いたしました。
労働審判では、原則として、個人の会社に対する労働問題が対象です。
しかし、個人の会社に対する労働問題であっても、労働審判手続ではうまく対応出来ない場合、すなわち労働審判で解決するのは不適当な場合があります。
というのも、労働審判法24条1項が、「事案の性質に照らし、労働審判手続を行うことが紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でないと認められるときは、労働審判事件を終了させることができる。」としており、このような不適当と認められる事件の場合には労働審判(判決に相当するもの)が出ることなく手続が終了してしまう(通常の訴訟に移行します。)ので、審判手続では解決を図ることが出来ないからです。
そして、このような「事案の性質に照らし、労働審判手続を行うことが紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でないと認められるとき」とはどのような場合かと申し上ますと、争点が多岐にわたる複雑な事案の場合です。
ただし、一見すると複雑に見えても法律的観点から見ればそれほど複雑ではなかったり、逆に単純に見えて複雑であることもあります。
さらにいえば、争点となるのは、相手がそこを争うからですので、争点が多岐にわたるかどうかも相手の出方(相手が争うかどうか)にもよります。
このため、このような事案であれば単純です、あるいは複雑ですとは一概には申せません。
それゆえ、労働審判の対象外の事件かどうかは、事案及び相手の対応を説明した上で、弁護士に相談なさってください。
なお、このような事案の性質によっては労働審判の対象とはならない理由は、労働審判の期日が3回以内とされており、
迅速に解決することが労働審判の目的の1つであり、複雑な事案の場合は3回以内の期日で終わらせることが難しいからです。
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